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疑問・課題発見

 先日、こちらの記事(興味関心と探究活動)で「疑問と課題を日常から考える習慣が必要」というような話を書きましたが、十分書くことができていませんでした。そこで本稿では、疑問や課題を日常から考えていくのはどうしてかというところを論じてみたいと思います。

科学者はどうしているか

 科学者の皆さんの多くは、先行研究を読むことで、問い(研究課題:Research Question)を生み出していると思われます。一方で、実践的な職業等についている方は、Action Resrachなどの考え方にもとづいて、現場での課題の明確化、その解決に向けたデータの収集、整理をされている場合もあるのではないかと思います。

 小中高校生が,研究課題をたてるにあたって,先行研究を参照することは,なかなか現実的ではありません.しかしながら,「自由研究」というレベルで,過去の子どもたちが,どんな研究をしてきたのかを参照することには,教育的にも意味があることでしょう.以下のようなサイトに,結構まとまっています.

理科自由研究データベース(お茶の水女子大学)
中高生の科学研究実践活動推進プログラム(JST)

子どもたちは全員科学者になるか

 それで,学校での理科とか自由研究とかを指導するに際して,「彼らは全員が将来科学者になるのか」というのは,考えておかなければならないところだろ思います.

 答えは「No」でしょうから,それならば,彼らが理科や自由研究を通して学んでいることは何なのか?ということになります.ここで言えば,「疑問や課題をたてられるようになることは,何につながるのか?」ということです.

問い、課題を発見することの教育的・社会的意義は?

Well-defined problems lead to breakthrough solutions. When developing new products, processes, or even businesses, most companies aren’t sufficiently rigorous in defining the problems they’re attempting to solve and articulating why those issues are important. Without that rigor, organizations miss opportunities, waste resources, and end up pursuing innovation initiatives that aren’t aligned with their strategies. ・・・Many organizations need to become better at asking the right questions so that they tackle the right problems.

よく定義された課題は,ブレークスルーにつながる.新しい製品,プロセス,あるいは新しいビジネスを開発するにあたっても,多くの企業は,彼らが解こうとしている課題について,厳密に定義してはいないし,なぜこうした問題が重要であるのかを明らかにしていない.そうした厳密さがなければ,組織は機会を逸し,リソースを浪費し,彼らの戦略に即していないイノベーションにつなげることを諦めなければならなくなる.…中略…多くの組織が正しい問いを問うことを上達させるべきだし,それが正しい課題に立ち向かうことにつながる.

The Power of Defining the Problem(ハーバードビジネスレビュー, 2012)

 課題解決はもはや科学者やエンジニアだけのものではなくて,多くのビジネスマンにとっても,重要なスキルであり,それが企業としてのイノベーションにもつながるということですね.その観点で,以下のような教育上の指摘もあります.

are their students solving true problems or mere exercises? The former stresses critical thinking and decision-­making skills whereas the latter requires only the application of previously learned procedures. True problem solving is the process of applying a method – not known in advance – to a problem that is subject to a specific set of conditions and that the problem solver has not seen before, in order to obtain a satisfactory solution.

子どもたちは本当の課題を解決しているだろうか,それとも単にエクササイズをしているだけだろうか?前者であれば,批判的思考や意思決定のスキルを強調しているだろうし,後者は以前に学んだ方法を適用するだけである.本当の課題解決は,具体的な一連の条件にあり,それを解決する者がこれまでには見たことがない問題に,満足できる解決策を得るために,以前には知られていなかった方法を適用する過程である.

Teaching problem-solving skills

まとめ 

ということで,教育ではこういう方法をどうにか取り入れようとしてきたんですよね.多くの場合「這い回る経験主義」的な批判がされて,またエクササイズに戻るということが繰り返されて来ました.それは,方法が悪いのではなく,それを本当に子供に教えようという意識や,術がなかったせいだと思っています.
 更に,Society5.0,「未来の教室」などで,本当にEdTechが活躍するようであれば,なおさら経験の側に教育としての重きが来るわけで,教師はそこを逃してはいけないと思うのです.

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