日本でもSTEM教育について,よく聞かれるようになってきました.ところで,そのSTEM教育改革はアメリカからスタートしています.そのスタートの時点で,アメリカはどんなことを考えていたのでしょうか?改革がスタートした当時のNational Action Plan(2007)から,見ていきましょう.
STEM 教育改革の課題意識
まず, アクションプランの示す根本的な課題意識として A:STEM 学習の一貫性と, B:よく仕込まれた非常に能力の高い STEM 教師の確保の 2 点がある.ここでいう一貫性とは, 「何が(どの主体が), いつ, 誰に向けて STEM の教科を教えるのか」のことであり, 「横向きには各州が, 縦向きにはPre-K から大学や専門学校の第一学年までの間」のことを指し, 「よく考えられ, 並べられた授業は知識の獲得と分析的, 批判的思考と, 問題解決スキルをバランスするように構築されるだろう」とし, 「こうした一貫性にたどり着くため」, また, 能力ある STEM 教師を育成するため, 以下のような勧告をしている.
米国連邦政府による STEM 教育改革(2016)
STEM教育改革のそもそもの目的,課題意識はこの2つに集約されている.「アメリカ政府が言ったと言えるのは」と限定されると,その参照先は大分限定しなければならない.現在日本から見えているSTEMの実態は,多くの教育研究者や,その他ステークホルダーが取り組んでいるものの総体であって,ある意味でそれがアメリカというものであると考えるのであれば,そうなる.アメリカというものは,そういうものだろう.
優先すべき勧告 A:国家の STEM 教育システムの一貫性を確認する
A.1. 重要なステークホルダーをコーディネートするためのアクション
- The National Council for STEM Education について
- Office of Science and Technology Policy– NSTC について
- The U.S. Department of Education について
- The National Science Foundation について
A.2. 横のつながりのコーディネーションと一貫性のためのアクション
- 国家の STEM 内容ガイドラインの開発
- 国家の STEM 内容ガイドラインに生徒のパフォーマンスを評価するための測定基準を沿わせる
- NCLB 法の下の評価が STEM の学習を促進していることを確認する
- 最善の実践を交流する
A.3. 縦のつながりの調整と一貫性のためのアクション
- 高等学校と高等教育や労働力との間のつながりを改善する
- P-16/P-20 のための州教育会議を創るか, 既存のものを強化する
優先すべき勧告 B: 生徒はよく仕込まれた非常に能力の高い STEM 教師に教えられていることを確認する
B.1. よく仕込まれた非常に能力の高い STEM 教師を教室に増やすためのアクション
- STEM 教師の報酬を増やすために予算を提供する
- 未来の STEM 教師の養成のために予算を提供する
- 国家の STEM 教師証明ガイドラインを創り, 推奨する
B.2. STEM 教師養成の質を高めるためのアクション
- STEM 教師養成を国家の内容ガイドラインとコーディネートする
- 高等教育機関の間の共同合意を改善する
まとめ
こういったことが改革の初期に勧告されたことにより,現在の大きな改革のうねりが生み出されたと言ってよいでしょう.
STEM教育改革とは,すなわち「STEM学習の一貫性」づくりと,それを可能にする「優秀な教師の育成」のことだったのです.