Practice1 課題を明確にする:Defining Problem

課題の明確化は何のためか

この活動で大事なことは問題を「問題だ~」ということではなく、解決可能な形に明確化していくことです。私たちは問題に打ちひしがれるのではなく、問題を解決したいはずです。この場面において、一番の敵は「何が問題なのか分からない」ということですね。

私たちが何かを解決できないとき、なぜそれが問題なのかが分かっていないということが良くあります。この活動では、その何かをどうにか解決できる形に変えてくることを学んでいきます。

こちらの活動も、各教科の学習の中で学んできたことを応用していくことがいくつかありますから、一つ一つのステップで思い出しながら進めていきましょう。

ステップ1
問題に関わる「ひとの活動」を外から観る

「問題」は多かれ少なかれ人間の関わる問題です。これを具体的にしていくことは、多くの場合骨の折れる仕事です。わたしたちは、誰か悪者を見つけ出したいのではなく、問題を解決したいだけなのですが、この世に起こっている問題が起こる場所には、「誰か」が関わっていることは間違いなく、またそれは「私たち自身」であることも珍しくはありません。

ここでは、「誰か」を特定しないまま、問題を扱う方法として、「内部」・「外部」・「活動」という風にラベルを貼ってみましょう。抽象的にものを考えるのは、理解を難しくさせることにもなりかねませんが、いろいろな場面に応用して考えられるという利点もあります。自分の考える問題に合わせて考えてみて下さい。

「内部」とラベルを貼ったのは、何らかの「活動」を行っている主体です。一人の人の場合もあれば、グループ、組織、会社など社会的な集まりである場合もあります。環境問題のような大きな問題の場合、人間社会と捉えても構いません。

このように、多様な「内部」が「外部」に対してどんな影響(図中矢印)を与えているのかについては、「活動」が表す部分です。

このとき「外部」は「内部」の活動によって影響を受けている対象です。影響がどこまでの範囲に及んでいるのかについては、問題によって大きく異なりますが、その影響のすべてを一度に解決することはできないから、問題は問題なわけです。ここで、うちひしがれていては、問題は解決できません。

現代において、問題だと考えられていることの多くは、この「活動」が「内部」からみたら必要で、当たり前で、悪気があるどころか正当な活動であるにも関わらず、「外部」には影響を与えているという事態です。

このとき、もしあなたが活動を行う主体の「内部」や、その影響を受ける対象の「外部」にあたる誰かであった場合、この構造を冷静にみることはできないでしょう。この構図においては、内部と外部は対立関係にあり、そのどちらかから見れば、反対側は敵のように見えてしまうこともあるでしょう。

内部が人間活動、外部が自然であればそれは、人間から自然への影響となり、多くの環境問題はこのような構図をもっています。

一方で、社会のシステムにおける影響としてもみることができます。

ここでは、社会の一部のように「内部」が組織で、「外部」がその周囲のように見えるかもしれませんが、機械などでも同じよう考えることができます。機械の一部である「内部」が原因で、その周りである「外部」、ひいては機械全体が影響を受けることになります。この場合、社会や人を扱うのと違って、対立関係には見えないかもしれませんが、大きな組織がつくっている製品などの場合、それぞれ内部・外部に担当する部署があるなどして、その対立につながる場合もあるかもしれません。

ステップ3は、そうした立ち位置から離れて、この図を外からみるような位置に自分を置くことです。もし、このような「活動」がいくつもあるならば、それらを一つ一つ吟味して、その主体である「内部」側と、その影響を直接受けることになる「外部」側を特定しましょう。このとき、いくつも一度に扱おうとすると、自分の扱える範疇を越えてしまう場合もあります。問題が問題のままになってしまいますので、気をつけてください。

ステップ2問題と課題の違いを理解する

私たちが解決したいその何かには「問題」というラベルがついていることが多いです。ここで、この活動の題名である「課題の明確化」という言葉を思い出してください。ここでは、同じように聞こえる「課題」というラベルが使われています。この2つの違いは何でしょうか。

  • 問題(Issues)はそれ自体を解決することができない
  • 課題(Problem)はそれ自体を解決することができる

というように理解してみると良いでしょう。問題の方がより大きく、複雑で、簡単には解決できません。一方で、課題の方には必ず答えが出せます。とはいえ、1+1=2のように答えが1つという訳ではありませんので、その辺りも以下で説明していきます。

よく探究のテーマになる地球環境問題、少子化問題、貧困問題、プラスチック問題、ほかにも問題はたくさんありますが、これらは確かに「問題」です。この規模のものをまるまるそのまま解決しようというのは、いささか楽観的過ぎます。どの問題も、それぞれ複雑に関係する問題が集まったもので、それをほぐしていっても、まだまだ問題が出てくるというような規模のものになります。

一方で、課題についてはずっと規模が小さく、解決が可能な規模のものということは言えるのですが、どの位小さくなったら、解決できるのかというのは、相当場面によって変わってきます。例えば、高校生までのテストで、答えがあるような問題と言ったら分かりやすいでしょうか。したがって、テストで問えるようなものは、そもそも問題ではなく課題であるとも言えます。それでも、それを規模として説明するのために、具体例を挙げることは難しい問題です。

その代わりに、以下ではどうやって課題を見出してくるのかを考えてみましょう。

ステップ3問題をより小さな問題に分けてみる

ステップ1では、問題と課題を規模の大きさ:複雑さで説明しましたが、課題を明確にしていくには、問題をより小さな単位に分けていかなければなりません。それでも大きな問題が小さな問題に変わるだけですが、大きなまま扱うよりはいくらかマシになってきます。以下、少し例を考えてみましょう。

例えば地球温暖化という問題は、人間の出す二酸化炭素が原因であるとよく言われます。一方で、人間が出す二酸化炭素以外にも地球のどこかから大気中に二酸化炭素が出るということはあるかもしれません。そうすると、地球温暖化問題を大きく2つの部分に分けるとすると

  • 人間が二酸化炭素を出すということ
  • 地球の他の部分から二酸化炭素が出てくるということ

という2つに分けることができます。これら2つにしても、まだまだ大きくて、とても解決のできそうな問題ではありません。このうち「人間が二酸化炭素を出すということ」を選んでみても、いつ、どこで、誰が、どの位の量を、どのように出しているのかによっても、答えは違ってきそうです。

試しに、もっと小さな部分に分けてみましょう

「人間が二酸化炭素を出すこと」という問題は、もっといろんな場面に分けることができます。文脈という言葉がよく使われますが、「どこで二酸化炭素は出されているのか」という問いに答えてみましょう。

  • 化石燃料の原料(原油)を掘り出してくること
  • それを遠くまで運ぶこと
  • いろんな用途に用いるために蒸留すること
  • それを用いるための(用いることで)道具を製作すること
  • 道具を動かすために化石燃料を使用すること
  • 使用した道具を処分すること

※ここでいう道具とは、機械・製品あるいはそれをつくる手段

これらすべての段階で二酸化炭素が発生していますが、これでもまだ一つ一つから出ている二酸化炭素を減らすというのはいっぺんにポンっと解決する規模ではありません。でも、大分何が起こっているかが明確になってきました。

このように一つ一つ問題を、それを構成するより小さな規模のものに分けていくことが、解決への第一歩です。この考え方は、以下のように数字を使って勉強したこともあります。

128 という数字は 64 という数字2つ分です。
64+64=128 でもよいし、64×2 でも構いません。
更に 64 という数字は 32 という数字2つ分です。
これも同じように 32+32=64 でもよいし、32×2=64でも構いません。

このように小さくしていってみると64→32→16→8→4→2→1最終的にはこれ以上分けられないところまで降りていくことができます。このとき、これ以上分けられない数字は「素数」とかっていいましたね。

実際の問題についてみるときは、(物質や言葉として)これ以上分けられないところまで小さくする必要はありません。少なくとも「誰か」が自分の手で扱えるレベルまで小さくすれば、それで十分です。

逆にあるところ以上に小さくしてしまうと、元の問題からは話がそれてしまうように思います。組織の問題を、個人のレベルにまで落としてしまったり、国の問題を、そこに生きる個人にまで落としていくのは、合っているようで間違ってしまう典型です。また、このときに個人を構成する分子・原子の話にしてしまうのは、オカルトのようなものになりかねません。あなたにとって扱うことのできるほどよい大きさにして扱いましょう。

例えば,サンゴ礁の消滅の例でも,いくつもの影響ある「害」を見出すことができますが,これらのなかであなたが一度に扱うことのできるのは,たった一つのはずです。

ステップ4「活動」についてよく調べる

このステップは、Practice 8 と大きくかかわっていますので、そちらも確認してみましょう。課題を明確にするためには、問題に大きくかかわっている「活動」(テクノロジー)にまつわる背景を知っておく必要があります。特に知っておきたい項目をまとめると、以下のリストのようになります。調査の参考にしてください。

  • 該当する活動(テクノロジー)がどんな経緯で開発されてきたか、その歴史について調べる
  • 調べた中から、テクノロジー開発の前後で何が変わったのかをまとめる
  • はじめてつくった人、つかった人の身になってその良さを考えてみる

 これらのリストはそもそもそのテクノロジーについて,語る資格を得る作業のようなもので,そのうえで,テクノロジーがアウトプットしている「害」と,それが対象(下図の例の場合はサンゴ礁)に及ぼしている影響を特定します(矢印で描写)。

ステップ5 「害」となっている要素の特定

このとき,「害」にあたる要素をアウトプットしている主体は,複数あるでしょうが,その中からあなたが特に着目する要素を絞りましょう。これも,あなたの作業と能力を集約することが目的で,最も優先度の高いものから一つずつ進めていくのが,まずは良いでしょう。(これは,その他を疎かにせよという意味ではありません)

ステップ6 課題の明確化

ここまでくると,緑色部分つまり「害」となっている赤土を排出しているテクノロジーが明確になっていると同時に,それを改善することが課題であることも明確になっているはずです。

では,これに対してどんな解決策を構築していったらよいでしょうか。Practice6の解決策の構築に進めるようなら進んでいきましょう。

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