この活動に自ら関われるようになるには,Computational Thinking(計算論的思考と訳されるようです)が何であるかをもっと議論する必要があります。が,最近の教育界の良いことなのか良くないことなのか,,,理論が固まる前に実践をしがちです。したがって,この活動が,どういうことを意味するのか固まった解釈がある訳ではないようですが,本講義の中身に合わせて,以下のように考えてみるとよいのではないでしょうか。このページでは言ってみれば”絶対に外さない範囲”で,言えることをまとめておくことにしましょう。
数学的にものを扱うには;その意味
皆さんがイメージとしてもっていらっしゃるように,科学やエンジニアリングの世界では,数学的にものごとを扱おうとしますよね。その意味は,数学というより抽象度の高い記号を用いることで,解釈の余地のない形で真偽を表現することにあります。(もちろん,そうすることのできない世界もたくさんあるとは思いますが),数学的に表現をすることで,確かな基礎を構築することができると考える訳ですね。
では,数学的にものを扱うにはどうしたらよいのでしょうか。探究の活動のなかで,言えることは,「扱おうとしているものごとに単位をつけて考える」ということがその第一歩であると私は考えております。
ステップ1:変数に単位をつけてみる
この段階は,既に誰かがやってくれている場合も多いです。逆に言えば,「どこに着目したら,単位をつけて扱えるのか?」という問いに答えていく作業とも言えます。
例えば,これまでに経験しているであろう場面をもとに説明するために,中学校で習うバネの伸びと力の関係を考えてみましょう。
| おもりの数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
| バネの伸び | 0.4 | 0.78 | 1.18 | 1.58 | 1.97 | 2.39 | 2.78 |
このように,実際に目に映る「おもりの数」と測って分かる「バネの伸び」は,変化していたとします。このとき,変化しているこれらの「何か」は,変数(Variables)と呼ばれます。
この時,おもりの数には(個),バネの伸びには(cm)と単位をつけることができます。
しかしながら,おもりが正しく同じ大きさ・重さを保ってくれている理科の実験用器具だったからこううまくいくのであって,これが大きさも,重さも異なるような野菜とか,魚介類とかっていったものだったらどうでしょうか。こう上手くはいきませんね。
そこで,人類は上手に比べ安いももの重さの単位を発達させてきています。現代で言ったら「g (グラム)」という単位にそれは集約されてきています。ここでは「個」という単位を使うよりも「g」という単位を使った方が上手くいきますよね。このように,使える単位を選んでいくことや,どれがそのようにうまく使える単位なのかを知ってもらうことも,このPracticeで学んでいってほしいことの一つです。
ここで大事にしたいことは,自分たちが今知りたいことに合わせて,自分で適切な単位を選べるようにすることです。その前に,「どれに」単位がつけられるのかを知る必要もあるかもしれません。全く,未知のものと出会う状態では,いったい何に単位をつけたらよいのかさえ,見えていない状態かもしれません。そこで,一度Practice1:課題を明確にするに立ち戻ってみましょう。
ステップ0分解された問題から変数を探す
問題を分解する
解決する課題を明確化し、小さな構成要素に分解します。例えば,先の例ではバネの伸びとおもりの数の関係を考える場合、変数(おもりの数とバネの伸び)を特定することが,これに当たります。理科の実験の場合は,既にどれが変数なのか分かりやすいように予め計画されていた訳ですが,現実世界・とりわけ環境問題や持続可能性に関わる界隈では,変数が明確になっていなかったり,分かっていてもデータがきちんと取られていなかったりすることも多いようです。まずは,その変数を特定して,現状どの程度明確になってきているのかを知ることは,本来の課題に近づくステップにもなります。
ステップ1変数に単位を付ける
扱う対象(変数)に具体的な単位を割り当てます。ここでは,先の例のようにおもりの数には「個」、バネの伸びには「cm」の単位をつけるといった具合です。そして繰り返しになりますが,できるならより一般的な単位にすることで,後での数学的な扱いがし易くなります。おもりの場合「個」ではなくて「g」を選ぶということになります。そのほか,この活動に関わってきそうな単位を幾つか挙げてみますので,ご自身の活動に関わる単位を考えてみる参考にしてみてください。
環境問題・持続可能性に関わってきそうな単位と(変数)
「人または匹」(人口・個体数),「㎢」(面積),「℃」(気温・水温),「ppm」(濃度),「W」(仕事率),
ステップ2:データを整理し,可視化する
データを収集し、規則性やパターンを見つけるために分析します。例えば バネの伸びのデータを表形式でまとめたり,グラフを描いたりすることで視覚的に関係性を把握します。このとき,先に示した表のように片方の値が一定の間隔で増えていくとき,もう一方の値も一定の間隔で増えていくというのは,特殊な事例です。理科の教科書でこういう実験が計画されているのは「比例する」と分かっているし,分かってもらいやすくするための実験を用意する必要があるわけで,初めから比例すると分かっているとは限らない訳ですね。この段階では,データを整理し,並べて,見やすい形にしてみたら,どんなパターンが見えてくるのか試してみるくらいに考えて取り組んでみましょう。
ステップ3:抽象化する
次に,不要な詳細を取り除き、問題解決に必要な本質的な情報だけを残します。例えば,おもりの重さやバネの伸びを数式やグラフで表現することを含みます。ここで,ステップ2のグラフと異なることは,数式化されたことで,そこから描かれるグラフが一般的な表現となることです。このバネののびの例でいえば,今目の前で行った実験から分かったことを示すものではなく,実際につるしたことのないおもりの個数において,どれだけののびをバネが示すのか,更には具体的な重さのおもりをつるしたら,バネはどれだけ伸びるのかというところまで示すグラフとなる訳です。
ステップ4:アルゴリズムを作成する
最後に問題解決のための手順を設計します。例えば,データを基に予測するモデルを構築し、適用する計算方法を考案するなどのことを含みます。この部分は,今まさに取り組んでいる探究の8つの活動そのものに当てはまりますから,この段階でステップ3までに得られた抽象,整理されたデータを,どのように他の段階に活かしていくのか,手順を考えるためのステップとしてみましょう。以下では,簡単な例を示します。
例えば,バネがおもりの重さと比例して伸びていくという情報が得られたとすれば,それをどのように解決策づくりに反映させるかということを考えてみましょう。
あなたは,バネを用いたバネばかりを作成することを目的としているとします。
その場合,まずバネをつくるところから始めますが,このとき全体のはかりの大きさ(長さや太さ)をどの程度にするのかによって,どのぐらいのおもりで,どの位伸びるバネを作る必要があるかが変わってくるでしょう。また,どれくらいのおもさまで測ることができるようにするのかによっても,バネばかり自体の大きさや,バネの強さに関わってくるでしょう。そうしたことを一度整理したところで,今回見出された情報が活かされる場面がきます。
それは,使用するバネにはどれくらいのおもりをかけたら,どの位伸びるのかという情報です。
それをもとに,使用するバネ,実際に測ることのできるおもりの重さ,そのために必要なバネばかりの大きさを決めることになります。
このように,必要とされる変数を洗い出して,それを整理し,決めていくという作業は,他のページでも扱っている解決策の構築や,課題を明確にする作業と直接関わってくる部分ですので,その段階で考えたことと,整合性が取れるようにしていきましょう。
最終ステップ:反復的に検証・改善する
これ以後は,得られた結果を見直し、必要に応じてモデルや手順を改善します。この作業自体,デザインの3つの活動,Define-Develop-Optimizeと直接つながっていますし,この探究の8つの活動がその順番通り必ず進む必要がないという部分とも関わっておりますので,他の7つの活動の中で,今どこにつなげていくべきなのか,その都度考えて進めていってもらえればOKです。必要があれば,ご相談ください。