システムの理解をサポートする概念|第1章|地球環境論

  システムの理解をサポートする概念として,表に示したような59の概念が考えられる(MOEA, 2002)。それぞれ,重要なシステムの概念の下位に収まるように配置しているが,一部重複して示されている概念も観られる。それぞれ下位にある概念が,上位の5つの重要なシステムの概念を理解する助けとなる。

 ここでは,システムの理解をサポートする概念のうちのいくつかについて,特に重要だと思われるものについて,幾つか取り上げる。
 まずは,パターン(Pattterns)である。パテーンについて認識することは,人間が自然や社会について理解するための基礎であり,これが認識できることで,システムとして世界をみることがはじまるともいえる。関連して,物事を並べ替えたり,分類したりすることができるのも,パターンがそこに存在するという前提で観察を始めるからに他ならない。
 次に,類似点と相違点(Similarity and Differences)という考え方がある。見いだされたパターンが積み重なると,あるもののもつパターンと,別のものがもつパターンとが,比較可能になる。このとき,両者が似ているか,異なるかに基づいて,類似点と相違点を整理することも,並べ替えの一つの方法である。このように,類似点や相違点を分析することは,システムの性質を理解する一つの方法である。
 さらに,類似点や相違点が積み重なり,分類が二重,三重になってくると,階層化(Stratification)が起きてくる。つまり,システムがこれまでに形成されていたレベルから,一段上のレベルにおいて,分析が可能になるということである。階層の積み重ねは,一段のみならず二段,三段と積み重なっていき,より複雑なシステムが見えるようになる。先に示した,サブシステムが形成されるのは,このような階層化が成された上で,それぞれの層内,あるいは層を超えてインプットやアウトプット,相互作用と関係性が成立している場合であり,人間側の理解として,階層化が成されれば,その理解に基づいて,サブシステムの階層が理解されるようになるものと考えられる。
 次に,原因と結果(Cause & Effect)という概念がある。システムの間にある相互作用は,何らかの原因によって動かされているが,システムに関わる要素が多数あり,複雑に絡み合っているがために,その原因と結果,つまり一方の変更による他方への変化の伝達を,正確に予想することは難しい。したがって,原因と結果という表現をしているにもかかわらず,システムにおいては,それが本当に原因と結果であったのかということを,確かめる方法は存在しない。
 それでも,あるシステムから出たアウトプットが別のシステムへのインプットとなったり,それがまた元のシステムに戻ってきたりというフィードバック(Feedback)が,部分や階層の形成に寄与していることが,知られている(詳細は,第2章の「基礎概念」の項,自己言及や再生産などを確認)。フィードバックは,通常一揃いのアウトプットとインプットからなり,システムからのアウトプットは,同じシステムか,あるいは異なるシステムの異なる部分へのインプットとなることがあり,システムの働きのある部分を調整するのを助けることがある。一方で,フィードバックの増加により,システムのある部分の変数が極端に増えていくなどの結果,破綻をもたらすことにもつながる。
 このように,システムの部分からのインプットやアウトプットが常に,別のシステムのインプットやアウトプットであり続けるため,システムは常に移り変わりと恒常性(Change and Constancy)をもちながら,全体を保っている。つまり,部分としては常に変化しているにもかかわらず,全体としてはシステムの姿を保つという二重の状態が維持されている。これも,システムの特徴の一つである。
 ところが,ある規模(Scale)で起こっている変化や,そのシステム全体への寄与が,別のより大きいか,より小さい規模のシステムにおいては,当てはまらないということがあり得る。このことは,あるシステムにおいて得られた知見が,ある別のシステムや,同システムの別の部分において,適用可能ではないかもしれないということを示唆している。
 とはいえ,あらゆるシステムにおいて変化をもたらす仕組みを観察すると,閾値(Threshold)がスイッチとして働いていることが,共通して見て取れることがある。日本では高等学校の教科書において,閾値の内容を扱うことが多いが,この際の例は神経細胞の一つ一つである。ある神経細胞において,一定以上の刺激が入ると,電流が流れるというように,閾値を見て取れる。ところが,実際に筋肉を動かす神経細胞全体を見てみると,右肩上がりに反応が起きている。システム全体としてみれば,一定に動いているように見えても,部分では閾値のような働きがあることを示す,好例である。システムとしての理解を持つことは,このように部分での閾値があることを意識したり,それを見つけたりする指向性を得ることにもつながるだろう。
 最後に,重複性(Redunduncy)について触れておく。これは,システムの部分やサブシステムが,システムの内部で重複した役割を持っていることを表す性質である。また,この性質があるということは,システムの一部について説明をすれば,他の部分についての説明を繰り返す必要がなくなることを示している。例えば,人体においては,肺・腎臓・眼・耳などの器官が重複しており,私たちはこれらの器官の仕組みを説明するために,左右別々に説明する必要はほぼない。それは,システムのなかで重複したこれらの器官が通常は同じ働きをしているからに他ならない。一方で,生態系などの大きなシステムのなかでは,全く異なる種が同じような役割を演じている場合もある。この場合,生産者である無数の植物類を別々に説明する必要はなく,「生産者」としてラベルを貼ることができる。一方で彼らが多様であるからこそ,生態系の中で「生産者」という役割が,重複性を持つことができていることも分かるだろう。従って,多様性はそれだけでもう一つの役割である重複性をも支えているのである。

 以上のように,システムについての理解は,それを支えるいくつかの概念から構成されている。このことからも分かるように,システムとは幾つかの概念をその部分に持ち,それらについての理解によって支えられているものである。すなわち,システムとはある種のモデルであり,システムそれ自体を観ることはできない。

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